『路上のエスノグラフィ』書評@図書新聞

少し前の図書新聞(8月4日号)に、関西大学永井良和先生が「現地調査ならではの知見:書かれたエスノグラフィが長く読みつがれるために」というタイトルで、『路上のエスノグラフィ』の書評を寄稿されている。たぶん福山では手に入らないので(天満屋ポートプラザの啓文社に売ってたかなあ・・・)、せりか書房からコピーを郵送してもらった。

僕の執筆箇所に関しては、「グラフィティという営みは、関係者への丹念なインタビューと資料精査から記述される。しかし、管理/抵抗という二分法のなかに押し込んで解釈するような、ありがちな結論は慎重に退けられた」と、高く評価して下さっているが、本書全体に対しては苦言が呈されている。ひとつは、エスノグラフィは現地の言葉を読者の言葉に翻訳する作業であるにも関わらず、本書では全体的に難解な言い回し(=「東大言葉」)が多用されていること。もうひとつは、インフォーマントの名前の扱い(=顕名とするか匿名とするか)に揺らぎがあること。いずれの批判にも返す言葉がなく(というか、既に自覚していたことであり)、真摯に受け止めたい。その責任は編者や編集者だけに(ましてや該当箇所の執筆者だけに)帰せられるべきものではなく、本書ができるまでの経緯からすれば、もっと僕にも対処できることがあったと思う。