シネマ尾道のカフェイベント

先月から週に一回、学生たちと映画のDVDを鑑賞し、その作品について議論する自主ゼミを始めた。通常の90分間の講義では、話の文脈に即して映画のワンシーンを上映することはあっても、一本の映画作品をじっくりと鑑賞することはできない。そこで夕方から時間を気にせず、みんなで映画を観る機会を設けることにした(かなり楽しいのだけど、ますます忙しさが増してしまい、それなりに苦しい・・・)。

毎週のゼミでは、それなりに大きいプラズマディスプレイを使い、教室を真っ暗にして雰囲気を出しているのだが、やはりたまにはみんなで映画館に行きたいねーという話になり、先週の金曜、尾道駅前にある映画館「シネマ尾道」のレイトショーに、学生5名と一緒に行ってきた。この日は午前中に講義が1コマ、昼食後に自主ゼミ(文献講読)、夕方には(株)アスコンクロスメディア事業部の方々とミーティング・・・と続き、なおかつ研究室に置いている(貸出期限が切れた)図書200冊を仕分ける作業*1に追われ、日が暮れたころには既に心身耗弱。

学生は尾道まで車に乗り合わせて移動することになったのに対して、定員オーバーで僕ひとり電車移動。

大林宣彦監督をはじめとする多くの映画人の作品によって、「映画の街」として有名になった尾道に現存する、唯一の映画館がシネマ尾道。2001年に尾道市から映画館が消滅してしまったのだが、04年に「尾道に映画館をつくる会」が発足、自主上映会を繰り返して08年に、NPOによってボランタリーに運営される映画館がオープンした。

この日観た映画は、ガス・ヴァン・サント監督、ショーン・ペン主演の『ミルク』(2008年)。ゲイであることを公表しながら権利活動をおこない、晩年にはサンフランシスコの市会議員を務めたハーヴェイ・ミルクの生涯を描いたドラマ。

この日は上映終了後、「シネマカフェ」というイベントが開かれた。観客にお茶とお菓子が提供され、テーブルを囲んでカジュアルな雰囲気の中で、作品について話をするという趣向。参加者はスタッフを含めて十数名。司会は支配人の河本清順さん。深夜の催しにわざわざ残るだけあって、お客さんは皆、饒舌。学生たちも皆しっかりと発言をし、いい感じで参加できた。これだけアットホームな企画は、地方でもシネマコンプレックスが主流になっている今日の映画館では珍しい。映画を媒介として地域のコミュニティをはくぐむことを目的とした、シネマ尾道らしい試みだと感心*2

この催しのことはウェブサイトには一切掲載されておらず、劇場の貼り紙によってのみ、告知されていた。まだ試験的におこなっている段階のようです。僕は先週、この映画館に一人で立ち寄ったさいに知り、これは映画ゼミと同じじゃないかと思ったのだった。

映画が終わったのは22:55で、それからカフェイベントだったため、福山に戻る終電は無くなってしまい、映画館の向かいの魚民で朝まで飲むことに(車で帰ることができる学生もいたのだけど・・・)。こうなることが最初から分かっていたため、他にも6名が参加したいと申し出ていたのだけど、徹夜はちょっと・・・ということで断念。言い換えれば、朝まで飲む覚悟のある学生だけが参加していたということ。今後も終電がネックになるかもしれないが、都合がつけばまた参加したい。こういう営みを通じて、地域と関わる足場をつくることができればうれしいし、シネマ尾道には尾道大学の学生さんたちがボランティアとして多く関わっているそうなので、学生どうしの交流にもなりそう。

以下はこれまで映画ゼミで観た作品。

ミルク [DVD]

ミルク [DVD]

接吻 デラックス版 [DVD]

接吻 デラックス版 [DVD]

K-19 [DVD]

K-19 [DVD]

*1:図書館が昨年度、蔵書管理システムを一新したため、それより前に図書費で買った本はバーコードを貼り替えてもらうために、図書館に運ばなくてはならない。新しいバーコードが貼られている本は、図書館から借りてきたバーコードリーダーで1年間の貸出延長ができる。

*2:先のエントリで紹介したように、12月19日(土)に広島で開催されるMELL platz公開研究会「地域文化とメディア実践」には、シネマ尾道の河本さんにもご登壇いただく。