テレビジョン・スタディーズ研究会(第3回)のお誘い

 『テレビジョン・スタディーズ・シリーズ』は、これまでせりか書房から刊行されてきた『メディア・スタディーズ』、『メディア・プラクティス』、『なぜメディア研究か』、『テレビはどう見られてきたのか』、『沖縄に立ちすくむ』、『日式韓流』などに続き、新しいメディア研究のパラダイムを、特にここでは「テレビ」に焦点化して、博士課程の院生や助手といった若手研究者の作品を一挙に刊行していくことで、世に問おうとしているものです。
 この研究会はすでに、各自が執筆構想を発表した第一クールを終えており、現在は第二クールとして、研究会をオープンにし、テレビ研究・メディア研究に関心のある方々と意見交換を行いながら、月一回のペースで草稿の検討会を開催しています。
 第三回は以下の内容で開催致します。事前申し込みは不要です。
 皆様のご参加をお待ち申し上げております。


日時:
  1月11日(木)18:30〜21:00

場所:
  東京大学大学院情報学環 本館6階会議室

報告者:
  飯田 豊(東京大学大学院学際情報学府博士課程/日本学術振興会特別研究員)

テーマ:
  「テレビジョン」の系譜学 ―昭和初期における公開実験の文化史


要旨: 
 地上波放送のデジタル化が進行しつつある一方で,インターネット放送が著しい普及を遂げている現在,これまでのテレビ研究,放送研究が前提としてきた「テレビ」の輪郭が,大きく揺らいでいる。技術的な変化にともない,制度的,産業的,ひいては文化的なデザインを今後,より望ましいかたちで進めていくためには,「テレビ」とわれわれのあいだの自明化した関係性を問い直し,その歴史を新たに編み直す作業を避けて通ることができない。
 昭和28年に登場した「街頭テレビ」は,日本におけるテレビ放送史の始原として広く知られている。しかし当時でさえ,人の集まるところに受像機を置き,その映像を公開するという発想それ自体は,決して目新しいものではなかった。ラジオの全国放送網が成立する昭和3年ごろから,実用化を目指して研究が進められていたテレビジョン技術が,博覧会の公開実験や実験放送を通じて,繰り返し一般に公開されていたからである。そこでは放送局のみならず,専門家と素人無線家の論理,科学的権威と興行価値といった思惑がせめぎあうなかで,テレビジョン技術の可能態が,実に多様なやり方で提示されていた。
 それにも関わらず,その経緯が今日ほとんど伝えられることなく,戦後の街頭テレビだけに焦点が当てられてきたのは,放送局による定時放送とともに「テレビ」が誕生したとする,狭義の「放送(局)史」の歴史認識に他ならない。端的にいえば本書では,日本におけるテレビの社会史の始原を,街頭テレビからさらに四半世紀ほど遡ってみたいと考えている。


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『テレビジョン・スタディーズ・シリーズ』執筆陣(予定)
 1.テレビと戦後日本:
     吉見俊哉東京大学大学院情報学環教授)
 2.テレビのテクノロジー
     飯田 豊(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
 3.テレビと歴史の語り:
     李 受美(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
 4.テレビと経済:
     石川幸太郎
 5.テレビとスポーツ:
     庭野 匠(東京大学大学院学際情報学府博士課程)
 6.テレビとコマーシャル:
     高野光平(東京大学大学院人文社会系研究科助手)